インド建築ツアー<1> 東京ーデリー経由ーアーメダバード

この春、渋谷にオープンしたミニシアター系コンプレックスQ-AXで、「マイ・アーキテクト」という映画が上映され、建築界ではちょっとした話題となった。マイ・アーキテクトとは20世紀のアメリカを代表する建築家ルイス・カーンであり、映画の内容はカーンの息子が亡き父の足跡を辿りながら、その人物像を探るというもの。クライマックスは、カーンの代表作バングラディッシュの首都ダッカに建つ「国会議事堂」のシーン。

以前から、インド、バングラディッシュ、パキスタン、スリランカなど南アジアは是非とも訪れたい地域だった。ただ、初めてのインド、バングラディッシュがカーンとコルビュジェの建築を巡る旅になろうとは・・・。

2月26日、インド建築ツアーの一行は成田空港からデリー経由で、西インドにある古都アーメダバードを目指して出発したのだった。アーメダバードはジャイナ教の「非暴力の精神」に影響された、かのマハトマ・ガンジーがイギリスからの独立運動の拠点とした都市であり、また綿産業の拠点としても栄えた。1950年代に入るとその豊かな資金力から、ル・コルビュジェやルイス・カーンを招聘して、公共建築や富豪たちの邸宅が建設された。今回の建築ツアーの目的はこれらインドモダン建築探訪。

デリー空港までは順調だったが、アーメダバードへのトランジットでいきなり90分遅れ。1時間の飛行のために5時間近くも空港内で足止めをくらう。インドでは、乗り継ぎには最低3時間の余裕を取るのが決まり。アーメダバードに着いたのは真夜中だった。

27日の朝、疲れ知らずの面々は朝から濃厚なカレーを食し、いざ、コルビュジェの「サラバイ邸」へ。サラバイ家はアーメダバード有数の名門一家。コルビュジェ設計の邸宅は、サラバイ一族が所有する広大な敷地の一角にある。建築の考察は専門書にお任せするとして、インドの濃密な自然環境に融和し、50年代の生活様式がそのまま封印されたかのような空間で、今でも人が暮らしているという事実に感慨を覚えた。

続いて、街の中心を流れるサバルマティー河畔に建つコルビュジェ設計の「繊維業会館」を訪問。ドミノシステムの3層構造の建物で、インドの強烈な日差しを避けるためのブリーズソレイユが印象的。戸外と屋内が共存する開放感溢れる空間を通り過ぎる川からの涼風が心地よい。

ランチを挟んで、一番気温の高い3時頃、カーン設計の「インド経営大学」へ。広大な敷地に幾何学的な建物が連続性を持って配置されている。建物のスケール感、蜃気楼が見えるほどの暑さ、人気のなさ(暑さのために戸外に居れない)が、形而上絵画を始めたジョルジュ・デ・キリコの絵画のようだ。

他にも、コルビュジェによる渦巻状に成長する美術館構想に基づき、アーメダバード、チャンティガール、東京上野に建設された美術館のひとつ「サンスカル・ケンドラ美術館」、コルビュジェの弟子であり、後に自国に戻ってコルビュジェとカーンのインドプロジェクトを支えたインド人建築家ドーシのアトリエ「サンガス」、「ガンディー労働研究所」「H・D・グファ美術館」、外観だけだったがコルビュジェの「ショーダン邸」と、たった2日間に8つのモダン建築、プラス、2つの井戸を訪問。これは、建築巡礼の旅?

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