インド建築ツアー<5> インドからバングラディッシュ、ダッカへ

チャンティガールでの怒涛のコルビュジェ建築探訪の次は、バングラディッシュの首都ダッカにあるルイス・カーン設計の「国会議事堂」だ。日も明けない早朝にチャンティガール駅を出発し、デリー、南インドのカルカッタ経由でダッカに向かう。しかし、デリーからダッカへの直行便はなく、遠回りだがカルカッタ経由となる。トランジットのための最低3時間は必要なインドの航空事情。飛行時間は合わせてせいぜい3時間ほどなのに、デリー空港、カルカッタ空港で途方もない時間を過ごす。免税店もカフェもない空港ロビーで、日本から持参した本を読むしか、することがない。結局、早朝にチャンティガールを出発して、ダッカのホテルに着いたのは日付も変わろうかという時刻。けれども、すぐにベッドでお休みはできない。なぜなら、私たち一行の到着を待ってくれていた、カーンの議事堂プロジェクトをサポートしたバングラディッシュの建築家たちとの懇親会が用意されていたのだ。ここまで来れば、体力と胃袋の限界への挑戦・・・でしょうか?

・・・しかしながら、建築巡礼者の面々は、映画「マイ・アークテクト」のクライマックスシーンだった朝靄に映る日の出の議事堂を確認するために、夜も明けない早朝にホテルを出発するという。私は当然ながら、ご遠慮させていただいた。

彼らに遅れること2時間ほど、胃袋の中に懇親会での食事が消化されずに残っているすっきりしない体調で、それでも朝8時頃ホテルを出発。一足先に議事堂に集結していた巡礼者の方々と、カーン設計の「アユブ病院」で合流する。カーンの建築は、今回アーメダバードの大学に次いで2度目。同じように幾何学的で赤レンガ造り。

そしていよいよ「バングラディッシュ国会議事堂」を訪問。皆さんはすでに「議事堂の日の出」を堪能された後だったが、私は初対面。人工湖畔に佇む威風堂々とした建物は、まるで古代の遺跡のよう。時空間を超えた圧倒的な存在感。今回のトピックスは外観だけでなく、内部に入れるということ。厳しい身体検査の後に、バングラディッシュ国民もめったに入れないだろう議事堂内部を見学する。

とにかく、スケールが大きすぎて、言葉が出ない。写真を撮ろうにも、撮りきれない。

カーンが設計し、64年に着工して完成するまで約20年。74年に亡くなった建築家は建物の完成を見ることが出来なかった。世界でももっとも貧しい国のひとつであろうバッグラディッシュの国民が、20年という歳月をかけながら、めげることなくこの建築物を完成させた。彼らにとってこの建物は、大きな誇りなのだろう。バングラディッシュの国民と老齢ながらアメリカからやってきた偉大な建築家に敬意を表します。

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