パリ<2> ケ・ブランリー美術館

パリの素晴らしいところは、中世から、19世紀後期のオスマン男爵による都市改造をへて、現代に至る歴史的遺産や街並みの美しさもさることながら、未来に向けての都市や文化的な投資が目に見える形で実行され、誰もが公平に楽しむことができることだろう。

新しい美術館ができ、ルーブル、オルセー、オランジュリーといった超有名美術館でさえ、時代に合わせて改築や拡張といったメンテナンスと目配りを怠らない。古きよきモノを残しながら、新しさへのチャレンジを忘れない行動力が、世界中から観光客を惹きつける原動力になっているのだ。・・・ということで、ジャン・ヌーベルが設計、2006年にオープンしたケ・ブランリー美術館を訪ねた。エッフェル塔の袂、セーヌ川に面した素晴らしいロケーション。美術館事体は巨大なレンガ色の竜が舞い降りたかのような斬新な姿だか、セーヌ川からみると透明ガラスを通して、敷地内のダイナミックな植栽はランドスケープがあって、ギリギリのところでパリの景観と調和を保っている。展示物はアフリカ、アジア、中南米などの民族芸術の数々。 外観もユニークだが、内部も今までの美術館とはまったく異なり、自分自身が映画の主人公になって摩訶不思議空間をさまよっているかのような構成だ。エントランスには巨大なガラス製の円柱がある。中にはスチール製の棚に所狭しと作品が陳列されている。たぶん、普通の美術館ではバックヤードに当たる所蔵室を、巨大なガラスの円柱として表に出すことによって、保管そのモノを見せてしまおうという逆転の発想なのだろう。整然と保管されている作品からは、きちんとショーケースに納められスポットライトも当てられた作品とは一味違った印象を受ける。そもそも、ここの展示品そのものが道具や古着やお面といった類のものなので、きちんとショーアップされないと、僻村の倉の中で見捨てられた古民具といったわびしさもたたえている。美術館や博物館にとって、空間や展示手法がいかに重要なのかを改めて考えさせられた。

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