ルーブル美術館で見たアートファンのつくり方

2013年12月、久しぶりにルーブル美術館を訪問。今回はフランドル派とオランダ絵画が目的だったが、どうした訳か閉鎖中。やむなく、並びの17~19世紀のフランス絵画を鑑賞することに。この辺りは、「モナリザ」のあるイタリアルネサンス絵画やルイ・ダビッドやドラクロワらのフランスロマン派の大作が展示されるドノン翼2階と違って、いつも人影もまばら。とはいってもロココ美術や19世紀絵画などいかにもフランスらしい作品が並んでいるのだが・・・。

歩いていると小学生と中学生らしき年代の子どもたちの美術館見学会に遭遇。欧米の美術館では、こうした美術鑑賞授業の現場によく出くわす。中学生たちは20名ほどがプリントを手に絵画作品めぐりをしている様子で、リストアップされた作品を探し出しては、描かれた年代や作者、感想を記述しているようだ。

小学生たちは20人ほどがグループを作り、作品を前に、美術館の学芸員(教育担当?)を囲んで腰を下ろしている。が、なかなかの腕白ぶり。学芸員は特に作品の解説をするでもなく、子どもたちにいきなり何か質問をする。すると子どもたちは、我先にと手を上げて一斉にしゃべり出す。学芸員は他の鑑賞者の迷惑にならないよう、日本と同じように人差し指を口の前に置いて「シー! 静かにしなさい!」と、子どもたちを黙らせようとする。担任と思しき人物は、われ関せずといった感じで生徒たちを見守るだけ。その様子が何とも微笑ましい。フランス語なので確かではないが、授業の目的は、作品に対するインスピレーションを語り合いながら美術に親しむことらしい。確かに、子どもたちは将来のアートファンの予備軍でもある。

一方の日本。1~2年間に子どもと一緒に美術館に行った人は全体の約35%、小学校の美術鑑賞教育への満足度は40%弱に留まっている。(第一生命ライフデザインレポート参照)

以前、金沢21世紀美術館を大成功に導いた初代館長の蓑豊さんに講演していただいたとき、「子ども時代に美術館に行っていないと、自分の子を美術館に連れて行くことはない。逆に子どもの頃から親と一緒に美術館に来ていると、その子が親になったときに、子どもと一緒に美術館にやってくる。ヨーロッパのある統計でもはっきりしています」というようなことを述べておられた。                             現在の日本は全国にミュージアムが建てられて美術展が開催されているが、全国民的といえる状況ではない。「美術は分らない、難しい」と思い込んでしまう前に、頭がまだ柔らかい子どものうちから、アートに触れ、感じられる機会をつくってあげたいものだ。

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上 小学生たちの鑑賞授業  下 中学生たちの鑑賞授業