明朝時代のアンティーク空間で、100モノのプーアール茶を飲む

7月中旬、猛暑の上海を訪問しました。上海市は電力不足のために気温が35度以上になると、観光名所であるバンド地区のライトアップが中止になってしまうそうで、それを目当てに来た観光客にはちょっと寂しい季節でもあります。

それならばということで、話題のスポット准海中路から復興中路あたり(昔のフランス租界の洋館を改装したレストランやショップが軒を連ねるエリア)で食事をしようとプラプラ歩いていました。

すると暗闇から「関さんじゃありませんか!!」という中国訛りで話しかけてくる人物に遭遇。その人は以前この「ヤスコの部屋」でご紹介した、上海で活躍するアーティスト+グラフィックデザイナーの張少俊さんではありませんか!

彼は「1400万人も住んでいるこの巨大都市上海で偶然に出会うなんて、私たち二人は強い運で結ばれています」と言い、私も余りの偶然に「運命か!」と思わず納得してしまったのでした。お互い連れがいたにも関わらず、「この近くにオープンしたばかりのすばらしい喫茶店があるので一緒に行きましょう」という誘いに乗って、歩いて30メートルほどのところにあった広い庭園を持つ一軒家の瀟洒な店に入りました。

ここは張さんの友人である郭さんが経営するプーアール茶専門の喫茶店「故園」でありました。郭さん一族は唐の時代から続く名門だそうで、ご自身は明朝時代のアンティーク家具の収集家として有名な人物。その貴重なアンティーク家具を生かせるビジネスをということで、復興中路界隈(東京で言えば青山といった地域)の洋館を大々的に改装し、さらに明朝時代の小民具、家具を中心にインテリアをまとめた喫茶店をこの春に開業したそうです。

店に入るとそこは異空間。最近の上海はグランドハイアットやテレビ塔が立ち並ぶ浦東地区、世界の最先端を行く未来的な部分が強調されていましたが、すでに温故知新をコンセプトとしたクリエーションが多く登場してきています。この故園はまさにその象徴となるカフェでしょう。

張さんは店に入るなり、二階の一番奥にあるオーナー専用ルームに直行。そこでは郭さんが、元卓球世界チャンピオンやアーティストなどのお客さまを招いて100年もののプーアール茶を振舞っていました。張さんはそんなことに構わず、「東京からすばらしいお客様が来ましたので、ご紹介します!!」と言いながら、私たちを勝手に着席させてしまったのでした。郭さんは予期せぬ訪問者にも貴重な100年ものプーアール茶とおいしい中国菓子で歓迎してくれたのでした。

最近は日本でも中国茶ブーム。一昔前にはウーロン茶かジャスミン茶くらいしか知られていなかったにも関わらず、最近は中国緑茶、鉄観音茶、またダイエットに効果絶大というプーアール茶他、多種多様なお茶を楽しめるようになりました。同時に中国式喫茶文化も注目されるようになり、独特の道具なども紹介されるようになっています。日本の、特に煎茶道はこの中国式の喫茶作法に強く影響を受けているんでしょうね。道具やマナーが驚くほど似ています。

ここ故園は主にプーアール茶を扱っていますが、郭さんによれば「プーアール茶は寝る前に飲むと体が温まり、安眠を促します。もちろん新陳代謝を高めますから美容茶でもあります」と、突然の客にもにこやかに説明をしてくれます。私たちはといえば、100年物のプーアール茶を頂ける機会などめったにないと、ただただガブ飲み。そのお礼といっては何ですが、このコラムでご紹介させていただくことにしたわけです。

さて、デザインについて書かなければなりませんね。中国のアンティーク家具は全く知識ゼロの私なので、張さんにその特徴を尋ねてみました。「明朝時代の家具の大きな特徴は素朴な力強さです。清調時代になると繊細な細工を施した家具や民具が多く作られるようになりますが、明朝時代は素材を余り加工しない素朴で力強いものが多いのです。でもそのシンプルさがかえって現代に通じます」とコメント。郭さんは、この空間でプーアール茶倶楽部なるコミュニティを主宰していて、「ここが上海の文化の拠点になってくれると嬉しいです」と考えているそうです。

今回は上海カフェ紹介になってしまいましたが、上海を訪れた際には是非是非、足を運んで、中国式喫茶を堪能してください。簡単な軽食も楽しめます。但し、100年ものプーアール茶をいただくには、張さんという強力な友人が必要です。

故園のアドレスと電話番号は下記の通りです。HPはまだありません。
No.1315 Fuxing Road  Tel.86-21-6445-4625

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