トルコ〈4〉~番外編~ トルコ絨毯と焼き物

旅の醍醐味といえば「観る、食う、買う(お土産を)」だろう。その点もトルコは優れている。5000年の歴史が育んだ伝統工芸が数多くある。絨毯やキリム、布製品、陶器類、楽器、象嵌細工製品などなどだ。

絨毯やキリムも産地によって図柄や織り方に特色がある。カッパドキアへの経由地であるカエセリという町が絨毯産地のひとつであることを知っていた私は、カッパドキアの個人ガイドさんに、”I am interested in Turkish carpet “ という一言を思わず漏らしてしまった。すると待ってました!とばかり「素晴らしい店がある」と案内されたところが、実際に素晴らしかった。

そこは国認定の「絨毯研究所・兼・工場・兼・職業訓練所」のような一種のNGOのような組織で、作り手である女性たちの技術向上や収入保証なども行っている。訪問者のために、糸紡ぎ、染め、織りなどを工程にそった見学コースがあり、最後には畳50帖ほどの広間があって、気に入った絨毯があれば即購入することが出来る。・・・というよりも、ほとんどの訪問者は、買わなくてはならないという心境にはまり込んでしまう(のは、私だけだろうか?)。何十という絨毯やキリムを見せてもらったが、ひとつ気になった柄があった。全体が黄色身を帯びており、全体にさまざまな動物の柄が織り込まれている。どこの絨毯屋でも見かける柄だったので質問してみると、「これは旧約聖書のノアの方舟伝説が残るアララト山脈のワンという町で作られている方舟伝説にちなんだ柄。黄色身を帯びているのは、そこが黄色の生糸の生産地だから・・・」だそうだ。もちろん、絨毯は購入した。

カッパドキアでは、洞窟内にある陶芸工房にも行った。ちょうどアメリカのテレビ番組が取材をしていて、町一番といわれる職人さんのデモンストレーションが行われていた。陶器の種類や柄、形もさまざまで、どれも魅力的だった。白地のシンプルな食器と組み合わせれば、楽しい使い方ができるかも・・・と思って、高価な皿を思わず購入してしまった。夫に制止されなければ、6枚セットで買っていただろう!

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トルコ〈3〉 イスタンブール

最後はイスタンブール。かのオスマントルコの帝都だけあって、トプカプ宮殿、アヤソフィア、ブルーモスク、グランバザール、地下宮殿などなど、見所たくさん。もちろん博物館・美術館も多い。

イスタンブールもマルマラ海、ボスポラス海峡、金角湾に面した海洋都市。心惹かれたたのは、街に点在する日常的な空間の豊かさ。イズミールと同様、気持ちの良い海岸線は、公園、船着場、マーケットや住宅など、生活の場として開放されている。喫茶文化も豊かで、喫茶のための空間が街の至ること箇所にあり、出前システムが整っている。トルコティ、トルココーヒー、水パイプ、甘い菓子類、お茶のためのポットやカップなど道具も豊富だ。喫茶の文化は、その国の歴史的・文化的な豊かさを図るバロメーターだし、自分のためにわざわざお茶を入れてくれるという心使いが嬉しい。十数年前に行ったベトナムのメコンデルタ地帯の農村でも、欠けた器に茎茶をいれてくれた。中国人も気軽にお茶を振舞ってくれる。イギリスの紅茶、ラテンな国々のカフェやバル、世界中に豊かな文化が息づいている。日本だって、世界に冠たる喫茶文化を築き上げた。私も10年ほど裏千家のお茶を習った。ところが今、ちょっとの時間が惜しいと。ペットボトルからお茶を注ぐことも多い。これって、何だか変?

今回の旅では、デジタル一眼レフカメラを買って、写真を取り捲るぞ!と勢い込んで出かけた。コンパクトカメラよりも撮る喜びは増した。観光客が持っているカメラもキヤノン、ニコン、ソニー、パナソニック、リコーなどなど日本製品がほとんどで、日本人として妙に嬉しかった。が、やはりトルコは観光国。観光客は圧倒的に団体客が多く、ほとんど全員がカメラを持参して、一時にどっとやってきて、ここぞ!というスポットで写真を撮りまくる。ここぞ!というスポットでは、静かに佇んで美しい風景や祖先が残してくれた文化遺産を心から堪能したい。しかし観光客の「記念写真を撮らねば!」という強迫観念が、ゆっくりしたい旅人の喜びを奪っていると思う。カメラという道具ができて、確かな思い出を手にいれ、旅の楽しさを他人と共有することができるようになったが、そこに居る時間、空間を楽しむという旅の醍醐味はどうしたの? それなりのマナーも欲しい。写真を撮りまくるぞと思っていた自分だが、ここぞ!という瞬間を撮影しそびれている。それは、団体客の勢いに圧倒されたことと、やっぱレンズを通してではなく、自身でその瞬間を体感したかったからだろう、と思う。

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