妻有アートトリエンナーレ 大地の芸術祭を訪ねて No.1
「大地と人々の営みと・・・」

大自然よりも、文化的、都市的なものに魅力を感じてしまう。・・・なので、最近、国内の旅といえば、もっぱら京都や奈良だった。こうした歴史都市には、1000年以上にわたる人々の営みが幾層にも積み重ねられていて、数回の訪問では決して知りえない、一筋縄では味わうことの出来ない魅力が塗り込められているからだ。

でも、たまには趣を変えて、違った地域も訪ねてみたいと考えていたところ、「妻有アートトリエンナーレ、なかなか良いよ」と友人たちに勧められる。確かに!自然と現代アートが同時に楽しめそうだ。それに、こうしたイベントには、たいてい「地元地域の活性化」とか「人々の交流」などのお決まりの看板が掲げられるが、果たして実際はどんなものなのだろうか、そんな好奇心に後押しされて、さて、出かけてみますか。

妻有アートトリエンナーレが開催されている越後妻有地域は、現在の新潟県十日町と津南町。かの魚沼産コシヒカリの産地であり、日本屈指の豪雪地帯。しかし、晩夏のこの時期、山地に切り開かれた美しい棚田には収穫を間近の稲穂が風にたなびき、冬の厳しさなど微塵にも感じさせない。日本人なら誰もが懐かしく、美しいと感じる里山の風景がそこにはある。このトリエンナーレには、ここで暮らす人々が気の遠くなるような努力で過酷な大自然を切り拓き、築き上げてきた田畑や山村を背景に、370ものアートが展示されている。地図を片手にそれらの作品を訪ね歩くことが、そのまま妻有地区の自然や人々の営みの発見につながる、そんな仕掛けになっている。

実際に現地に行ってみると、作品の背景には美しい棚田や田畑が広がり、主を失った農家の廃屋には過酷な北国の生活の痕跡がそのまま封印されている。こうした大地や村々の佇まいこそ、何よりも貴重なアートのように感じられる。

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