3月2日は早朝から、「建築学校」、渦巻状に成長する美術館構想のひとつ「チャンティガール美術館」、中央官庁エリアにある「高等裁判所」、「チャンティガール議事堂」、「美術学校」を訪問。
中央官庁エリアにある「高等裁判所」では、玄関に設けられた巨大な3本の塔状の壁が圧巻。それぞれ緑、黄、橙色に塗り分けられており、くすんだコンクリートの壁とのコントラストがすごい。その塔状の壁を眺めながら緩やかなスロープを登りきると、例の空中庭園が広がる。ブリーズソレイユは強烈な日差しを遮り、チャンティガール地方の乾いた風のみを建物内に取り込む。インドにあるコルビュジェの建物は、どれも粗いコンクリート仕上げであり、邸宅、学校、議事堂や裁判所などの権威的色彩の強い建物が多い。しかし、不思議なことだが、見学していると、フリッツ・クライスラーのバイオリン曲やモーツアルトのオペラ「魔笛」といった軽快な曲が聞こえてくるような錯覚を覚えた。なんだかウキウキと心が弾んでくるのだ。なぜなのだろうか?コルビュジェの建物は、音楽的で人間の身体感覚を呼び起こしてくれる何かが仕掛けられているようだ。
そして、いよいよ「議事堂」に。建築の専門家でない私はここでも妙なことに感心してしまう。それは、思わずワーッと見上げてしまう圧倒的な空間を構成する巨大なコンクリートの壁の所々に、「お魚」、「手のひら」といったレリーフが悪戯書きのように施されているのだ。それも子どもの絵のような素朴で単純な絵柄なのだ。コルビュジェさんって、なんてお茶目なんだろう。
このようにチャンティガールはまさにコルビュジェ建築巡礼の2日間だったのでした。
それにしても、半世紀前、今ほど交通機関も発達しておらず、インターネットもない時代、決して若いとはいえない年齢の建築家が、たった一人フランスからやってきて、何もないインドの荒野に都市を構想する。その都市が50年以上の年月を経て、多くの問題をはらみながらも、州都として歴史を重ね、人々の暮らしを支え、そして世界中から建築家や学生たちを引き寄せている。そして建物は、埃っぽい乾燥した北インドの大地に根を下ろし、その薄茶色の大地や強い日差し、乾いた風と共生している。たぶん、これから50年後も、これってすごい。