今回は総合テーマ「ファンダメンタルズ」に加えて、「エレメント・オブ・アーキテクチュア(建築要素)」、「Monditalia」、「近代性の吸収:1914~2014」の3つのお題も提示された。番外編も含めて4回に分けてご紹介しよう。
「建築要素」は、ジャルディーニのメインエントランスの正面にあるテーマ館が舞台。古今東西から、ドア、床、窓、屋根、扉、外壁、便器といった建築要素が圧倒的な質量で収集され、あるものは解体され、またあるものは貼り付けにされ、またあるものはガラスケースに陳列されといった具合に、これまた斬新な手法で展示されている。内容ももちろんだが、展示デザインとして見るだけでも刺激的だ
床のからベランダのゾーンを見る 上 外壁のゾーン 中 ドアノブのゲート 下
屋根のゾーンには、中国やインドネシアなどの特徴的な屋根に加え、2020年東京オリンピックのために造られる新国立競技場の設計で話題を集める建築家、ザハ・ハディドが世界中にばらまいている3Dデザインによる屋根の模型もガラスケースに鎮座している。新国立競技場では「東京の景観を壊す」、「スケールが大きすぎる」、「競輪用のヘルメットのようだ!」などといろいろ形容されている。7月5日には反対のデモ行進もあった。(詳細は「国立さんを囲む会」)
これらの模型を見る限り、確かにザハさんは、歴史風土とか、土地柄とか、現地の人々の生活などには、ほとんど関心がないようだ。それよりも3Dが生み出す今まで見たことのなかったような斬新な造形を、最先端のテクノロジーで実現することに興味があるのだろうなあと感じる。それを置く場所はローマでも、東京でも、ドバイでも、北京でもどこでもよくて、まるで世界中にばらまかれる工業製品や、マクドナルドのようなグローバルブランドのデザインのよう。ザハというロゴマークが貼り付けられたブランド建築だ。それが彼女のアプローチなのだから、良いとか悪いとかの問題ではない。むしろ、そうした性質の建築家をチョイスした側のスタンスが問われるべきだなんだろう。
それにしても、人間が生み出してきた「建築要素」の質量はすごい。最近話題の3Dのイメージングやコピー技術によって、建築要素の差別化、多様化はもっともっと進むだろう。けれどもどんなにデザインが多様になろうとも、建築要素の本質はドア、床、窓、屋根、扉、外壁、便器など少しも変っていない。一長一短では進化できない人の身体や感覚を無視することができないのだから・・・。テーマ館のエントランスには最初の一行は Architecture is a profession trained to put things together, not to take them apart. とある。
Photos YASUKO SEKI