シュタイナー教育の片鱗に触れる

台風8号が接近する7月8日、シュタイナー教材の輸入販売をしている「おもちゃ箱」が主催するワークショップに参加。午前中は、蜜ろうクレヨンや粘土、水彩絵の具で知られるドイツ・シュットクマー社のピーター・ビシュッタ氏、続いてシロフォンで知られるスウェーデン・マリウス社のシエル・アンダーソン氏のレクチャー。午後は複数のグループに分かれて、水彩、蜜ろう粘土、フェルト工芸、音楽などのワークショップ・プログラムに参加した。

シュトックマー社は「人間は感覚を通して自分を取り巻く世界と関わっている」という認識から、「感覚を磨く」ための道具として、絵の具や蜜ろう粘土などのアート教材を作り続けている。とくに注目したいのは「色」の選定だ。ベースは『ファウスト』の作者として知られるドイツの文学者ゲーテが考案した色彩論「色彩環」を基本にしている。色彩環とは、赤・青・黄の3原色が赤を頂点とした正三角形状に配され、その隙間を赤ー黄、黄色ー青、青ー赤がまじりあう色、つまり順に、橙、緑、紫の3色が緑頂点に逆三角形を作り、その間にさらを6色が埋めていくというもので、現在の色彩論の基にもなった。同社は、子どもたちに対して、まず基本色である3色を置き、その3色から生まれる豊かな色彩の世界の体験を重視している。

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ゲーテの色彩環 上  ワークショップで使った色彩サンプル 中 筆者の作品 下

午後のワークショップではビシュッタ氏がファシリテイターを務め、明暗の違う、赤、黄、緑の6色を使って、大地に生える木を描く。用紙に透明感のある6色の水彩絵の具を置き混じり合わせていくと、豊かな色のシンフォニーを奏でてくれた。絵を好き勝手に描くことも楽しいが、このような実験的な体験もたくさんの発見があって楽しいものだ。

DSCN1397 マイルス社のアンダーソン氏。

シュタイナー教材では、絵具なのどビジュアルアートの教材も充実しているが、シロフォン、ライヤーやキンダーハープなどの楽器も充実している。これらは単独の演奏ももちろん楽しめるが、今回のワークショップでは数人が同時に演奏し合い、互いに共鳴・共感することによって、音楽の可能性を体感する実践も行った。ワークショップを通して感じたことは、人間に備わった感覚(シュタイナーは人間には12の感覚があるといった)で感じ、感じたことを表現すること、その作品を共有することの素晴らしさ。これは子どもだけでなく、現代の大人に対しても大切なメッセージを発してくれているということだった。

Photos/ YASUKO SEKI