第14回ベネチア・ビエンナーレ国際建築展 その5 場外編

ベネチアの地図を片手に関連イベントを巡ってみよう。IMG_0042

ベネチア・ビエンナーレ国際建築展の開催中には、ベネチアの街のあちらこちらで関連イベントが催されており、地図を片手に迷宮都市を散策するのも楽しみの一つだ。これらはジャルディーニやアルセナーレにパビリオンを持っていない国々建築家のグループ、あるいは有志たちが市内のパラッツォやミュージアムを借りて、独自に企画されたものだ。幾つかご紹介しよう。

市内の2カ所に分かれて開催された「time space existence」は、ともに古いパラッツォを会場に若手クリエイターたちが思い思いのインスタレーションを展開。とくに会場の一つであるパラッツォ・モラは現在改装中なのだろうか、その工事現場のような光景や窓という額縁に切り取られたベネチアの風景の方が、著者にはtime space existenceに感じられた。作品にかける若手の意気込みには共感するが、ホワイトキューブではないこうした歴史的環境の中で作品を発表するのは、よほどの覚悟と空間の読み取りが必要だと感じる。

R0013388パラッツォ内での展示。

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R0013377数ある中で空間をきれいに使っているインスタレーション 上 アートのような改装中の部屋 下

大運河に面したパラッツォを会場とした「made in europe」は、100年間のヨーロッパ建築を徹底的に分析してみせた力作だが、なにしろボリュームがありすぎて消化しきれない。膨大なデータ、とにかく集めに集められた建築模型たち。近代建築はヨーロッパを中心に誕生し、発展してきたことを実感するのみ。

R0013786奥の部屋にはヨーロッパ建築を数値化して分析したパネルが多数

各国館では、ニュージーランド館。建国以来、先住民であるマオリの人々の文化を尊重し、融合を目指してきたニューランドの文化の在り様を、「建築」というフィルターを通して分析している。そこには近代建築にマオリの木の文化を取り入れようという努力の痕跡が見て取れる。

R0013772マオリの建物をモチーフにした展示

ニュージーランド展の近くでは「young architects in africa」と題し、アフリカ大陸で活動する若い建築家たちがプロジェクトを発表していた。興味深かったのは、彼らが手掛けているプロジェクトのユニークさ。貧困層のための住宅。貧しい村の集会場。子どもたちのための教育施設などなど、そこにあるのはまさにBOP(Base Of the Pyramid)のための建築だ。国籍を問わず、若い建築家たちが自らアフリカに乗り込んでBOPのためにプロジェクト立ち上げ、実践している。それらはまさに「近代性の吸収」を超えた、新しい建築の行方を示唆しているように感じた。

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R0013759 展示はシンプルだが、発表されているプロジェクトはどれも興味深い。まず感心するのは、地元の素材(あるものを)を上手に使っていこうという姿勢。

Photos YASUKO SEKI